約 3,432,613 件
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1788.html
生け花の稽古を放棄した政宗は、特に行き先も決めず 馬の走りたいように走らせた結果、あまり馴染みのない場所に辿り着いていた。 米沢城からかなり離れているだろうその深い森は 一面彩やかな紅葉に染まり、今にも燃え立たんばかりだった。 「…so beautiful…すげぇな。」 ゆったりと馬を歩かせながら、政宗は馬上からその美しさに眼を細める。 (…出て来て正解だったぜ。四六時中城に引きこもってたんじゃ、 生きてても死んでるのと変わりゃしねぇからな。) そんな事を思いながら上機嫌で馬を進ませていると、 樹々の隙間から何かがまばゆく煌めいているのが目に入る。 政宗は馬上から降りると、手頃な木に馬を繋いだ。 そしてその輝きに引き寄せられるようにして、森に踏み入った。 「池か。」 湖とまでは行かないが、かなり大きな池がそこに広がっていた。 澄んだ水が日の光を弾いてきらきらと輝き、赤や黄色の落葉が 錦のように水面の端々を彩っている。 適当な場所に腰掛け、政宗はしばしその光景に見入った。 奥州の短い夏と長い長い冬の狭間に、 一瞬だけ紅く燃えて消える、儚い季節。 政宗の一番好きな季節でもあった。 小十郎も連れて来ればよかった。 そう自然に考えた自分に、政宗は舌打ちする。 稽古を放り出した上に一人で飛び出したのだから、 城に帰れば当然盛大に叱られ、長い説教が待っている事だろう。 だが、小十郎に叱られる事も説教も慣れっ子の政宗には、 それは別にどうと言う事はない。 政宗が憂鬱に思っている事は、また別に存在した。 「なーにが稽古だよ。馬鹿こじゅ。」 そう呟きながら、政宗は兜を脱いだ。 秋とは言え僅かに日差しが熱を持っていたし、辺りに人の気配も(ついでに忍の気配も) 無いので、少しくらい窮屈な物を脱いでも良いだろうと判断したのだ。 本当は鎧も脱ぎたかったが、再び着るのが面倒そうなので止めた。 秋風が髪に触れるのを感じながら、政宗はぼんやりと思い出す。 まだ本当に幼かった頃…小十郎に連れられ、こんな風に見事な紅葉を見た事があった。 我儘を言って輿には乗らず、結局小十郎の馬に乗せて貰い、 もっと速く走れとねだっては小十郎を困らせていた。 その時の小十郎の困り顔を思い出し、政宗は口の端で密かに笑った。 まだ何も失っておらず、本当の苦しみも知らなかった頃の話だ。 遠い昔と言うよりは、他人の思い出を垣間見ているような 気分で、政宗はその情景を思い起こした。 楓の葉が、ひらりと肩に一枚舞い降りる。 彩かなそれを手に取り、眺めながら政宗は呟く。 「…俺にお前らの万分の一の綺麗さでも有ったら、 稽古しても絵になったろうな…。」 幸い、その寂しげな呟きを聞く者も、今にも折れてしまいそうな 儚さを覗かせる細い背中を見る者も、この場には居なかった。 〈その頃の米沢城〉 「おい!戦でも始まんのか?片倉様がバリバリに武装して馬で出てったぞ!」 「ああ、なんか野伏りがネジロにしてるって噂の森に 筆頭が入ってくの見たって報告が有ったらしいぜ?!」 「マジかよ?!俺らも加勢に行くべ!」 「バッカ!片倉様に「俺の留守中は死んでも城を守れ」って言われてんだよ! 地獄見てーのかテメー!」 「い、いや。片倉様にだきゃあ怒られたくねぇ…(ブルブル)」 「…だろ?(ブルブル)」 おなごBASARA 小ネタ
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1786.html
「佐助の、子…?」 そう呟いた次の瞬間、旦那の顔が耳まで真っ赤に染り、 それをまじまじと見る暇もなく、稲妻のような速さで俺様の右っ面に鉄拳がめり込んだ。 いやー…あれはキツかったね。身体が2~3米は吹っ飛んだ上に、 首の骨が「ゴギリ」ってイヤな音たてて、一瞬お花畑が見えたもの。 「た、戯れが過ぎるぞ佐助っ!! そ、そ、それがしもう帰るっ!!」 やや裏返り気味な声でそう叫ぶように言うと、旦那は物凄い速さで走り去った。 馬より速かったんじゃないかな、あれは。 「…戯れ、ね…」 その場に取り残された俺は、見事に腫れた頬をさすりながら なんとなく一人ごちた。 やっちゃったなぁ…・ 忍び人生は割と長いけど、こりゃその中で一番の失態かも知れないや。 なんせ主人…しかも月のものがようやく来たようなおぼこ娘に、 最後までじゃないけど手を出しちまったんだもんねぇ…。 こりゃクビ、もしくはお館様の巨大軍配で真っ二つにされちゃっても仕方ないか…。 そんな事を考えながら、俺もその場から立ち去った。 …なんだか、やけに虚しかった。 クビになるのもお咎めを食らうのも、別にどうって事ないよ。 …ただ、旦那がもう二度と、あの人懐っこい笑顔で 話し掛けてくれる言は無いのかもしれない。 そう思うと、自分のした軽挙盲動を心底後悔した。 「戯れじゃあ、ないんだけどね…」 っていうか、戯れじゃないからいけなかったのか。 忍なんてどれだけ腕が立っても、所詮道具に過ぎないのにね。 …その本分を見失った俺様はホント馬鹿。 イヤになっちゃうよ。 それから数日経ったある日。 また例の場所で仕事明けの休息を取っていた俺様は、 木に何か太いものが突き刺さるような振動で叩き起こされた。 恐る恐る下を伺うと、幹の下の方に何やら 風呂敷包みを括りつけられた一本の棒が深々と突き刺さっていた。 近付いてよく見てみると、それは棒ではなく槍だった。 それも旦那が日頃よく使っている練習用の槍だ。 これはもしかしなくても旦那からのものか? …まぁ辺りを見てもまるで人影はないし、かなり遠くからこの槍を投げて、 さらに目標に命中させるなんて芸当が出来るのは、この甲斐では旦那しかいないしね。 取り敢えず槍に括りつけてあった風呂敷包みを開けてみると、 中にはあの日俺が旦那に貸した上着と、一通の手紙が入っていた。 封紙の表には「佐助へ」と旦那らしい力の入った字で書かれている。 手紙には、こう書かれていた。 おなごBASARA 後編2
https://w.atwiki.jp/bsbwiki/pages/19.html
舞台「戦国BASARA2」 2012年5月10日~5月15日 ル・テアトル銀座 2012年5月19日~5月20日 イオン化粧品シアターBRAVA! 2012年6月2日~6月3日 中日劇場 【出演者】 武将 前田慶次:伊阪達也 竹中半兵衛:崎本大海 豊臣秀吉:小田井涼平 伊達政宗:久保田悠来 真田幸村:細貝圭 片倉小十郎:吉田友一 猿飛佐助:村田洋二郎 徳川家康:広瀬友祐 石田三成:中村誠治郎 武田信玄:中村憲刀 上杉謙信:AKIRA かすが:知念沙也樺 前田利家:真佐夫 まつ:別府あゆみ アンサンブル 高橋光 翁長卓 金田進一 白井雅士 遠藤誠 白崎誠也 佐久間祐人 八巻正明 竹内諒太 一内侑 平野雅史 石井寛人 梅澤良太 山本常文 桑田裕介 澤田拓郎 本間健大 為房大輔 【スタッフ】 構成・演出・振付:西田大輔 原作:CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ) 原作監修:小林裕幸(CAPCOM)、山本真(CAPCPM) 演出助手:佐久間祐人(AND ENDLESS)、中川えりか(AND ENDLESS)、梅澤良太 振付協力:高橋光(JAE)、松尾耕(MKMDC) 舞台監督:清水スミカ、深見信生 舞台監督助手:保坂康幸 舞台美術:角田知穂 大道具:俳優座 照明:大波多秀起(デイライト) 照明オペレーター:成瀬徹 照明助手:天野もも、石川由美子 音響:前田規寛(M.S.W.) 音響助手:上妻圭志(S.S.E.D.)、岩崎大輔、太田智子、水木さやか 映像:奥秀太郎(NEGA) 衣裳:渡邊礼子(アーク・プロジェクト)、エレファントチョップ、Office ENDLESS 衣装助手:青柳佳寿美、村澤はるな ヘアイメイク:木村美和子(エレファントチョップ)、車谷結(エレファントチョップ)、三根英世(エレファントチョップ) 小道具:Office ENDLESS フィジカルアドバイザー:木村鉄哉(スポーツプログラムス) 楽曲提供:abingdon boys school、伴都美子、石川智晶 グッズデザイン制作:齋藤暁郎、清水みちる(礼泉堂)、原口貴史(礼泉堂) スチール:渡辺慎一 VTR収録:カラーズイマジネーション Web制作:まめなり 制作協力:山宝産業 ラインプロデューサー:榊陽介(ダイス)、徳秀樹(ダイス) 制作担当:北村かずや(ダイス) 制作進行:長澤一儀(ダイス)、中里史絵(ダイス)、東川清文(ダイス) 協力:アートレイン アガペー AND ENDLESS エイベックスエンタテイメント EPICレコードジャパン MSエンタテイメント オフィスASOBO 劇団ZTON 思誠館道場 GMBプロダクション GPR ジャパンアクションエンタープライズ スタービートエンターテイメント スペースクラフト センスアップ たむらプロ bamboo ビクターエンタテインメント フライングドッグ プロダクション尾木 マーズトップ メインキャスト ライブビューインジャパン LOTUS 新妻佑子 藤田優衣 村瀬啓佑 制作:Office ENDLESS、ダイス プロデューサー:三角大、下浦貴敬 共催:JTB法人東京、MBS毎日放送 主催:ダイス、中日劇場
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2030.html
「政宗様ッ!!」 「うわっ」 有無を言わさぬ勢いでがしりと両の肩口を掴まれ、 政宗は思わず困惑の声を上げる。 「怪我は有りませんか!?下郎共に無体な仕打ちを受けては居ねぇでしょうな?!」 「け、怪我はねぇし、Rapeもされてねぇ!だから落ち着け、小十郎」 「小十郎はいたって平静にござる!」 「どこがだよ!」 どう見ても平静ではない小十郎の険しい顔に、政宗は今更ながら 「やっちまった」と内心青冷めた。小十郎は日常的に小言を言ったり叱ったりするが、 本気で怒ったり取り乱したりする事など殆どない男だ。 …戦場で、政宗が命に関わるような無茶をした時以外は。 「…まぁ、今回の事は責めますまい。 民を無法者から救う為になさった事なれば。」 つい取り乱した自分をひそかに恥じるように 淡々とした小十郎の言葉に、政宗は問い返す。 「…そう言えばお前、どうしてその事知ってるんだ?」 「此処に来る迄の道で出会った、政宗様の馬に乗った娘から 事の子細を聞きました故。」 小十郎の応えに、政宗の表情が僅かに緊張する。 「あの娘はどうした?無事だったろうな?!」 「…ひどく泣いてはいましたが、怪我ひとつ無いようでしたし、 聞かれた事にもきちんと答えておりました。 家まで送りましたので、今頃は家族の元でしょう。」 「…そうか、そいつは良かった。」 小十郎の言葉に、政宗は心底ホッとしたように胸を撫で下ろす。 逃がしたはいいが、落馬したり他の野盗襲われたりはしていないか ひそかに心配だったらしい。 「それで、此処への到着が遅れました。」 「いや、Coolだぜ小十郎。…これで娘を放って俺の所に来たりしたら 許さねぇ所だった。」 政宗は、改めて周囲を見回した。地面に転がる無数の野盗共の死体は、 それでも政宗に襲い掛かって来た者の半数に過ぎない。 残り半数はあっと言う間に戦意を無くして何処かしらに逃げた。 もう、この近隣に近付こうとはしないだろう。 「ま、何にせよあの娘が無事で良かったぜ。 ならず者共の慰み物になるなんざ、あんまりに可哀相だからな。」 「…自分もそうなる所だったとは、思わないのですか。」 「Ah?」 何かを押し殺すように重い小十郎の声に、しかし政宗は深刻さを欠いた様子で応える。 小十郎が心配するような事態にはどう転んでもならないと、分かっていたからだった。 おなごBASARA 続③1
https://w.atwiki.jp/bsbwiki/pages/143.html
舞台「戦国BASARA4」 2014年10月31日(金)~11月9日(日) 東京ドームシティホール 2014年11月22日(土)~11月24日(月) キャナルシティ劇場 2014年11月27日(木)~11月30日(日) 森ノ宮ピロティホール 2014年12月5日(金)~12月7日(日) 中日劇場 【出演者】 武将 徳川家康:広瀬友祐 石田三成:中村誠治郎 島左近:加藤慶祐 柴田勝家:藤田玲 伊達政宗:山口大地 真田幸村:松村龍之介 片倉小十郎:吉田友一 猿飛佐助:村田洋二郎 大谷吉継:新田健太 風魔小太郎:高橋光 織田信長:窪寺昭 明智光秀:谷口賢志 浅井長政:桜田航成 お市:玉置成実 足利義輝:天野浩成 アンサンブル 竹内諒太 平野雅史 石井寛人 梅澤良太 本間健大 齋藤洋平 前田慎治 為房大輔 山本常文 奥山洋文 三上竜平 小島和幸 西田直樹 弓田速未 田村允宏 松田一希 【スタッフ】 構成・演出・振付:西田大輔 原作:CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ) 原作監修:小林裕幸(CAPCOM)、山本真(CAPCPM) シナリオ協力:松野出 舞台監督:深見信生(Soranch) 演出部:保坂康幸、藤本典江、菊池桂多 演出助手:佐久間祐人(Office ENDLESS)、梅澤良太 舞台美術:松本わかこ 舞台美術補:角田知恵 照明:大波多秀起(デイライト) 照明オペレーター:志田章、石川由美子、荒牧万美子、渡辺恵美子、広瀬志津子 音響:前田規寛、上妻圭志(SSED)、新井のどか サンプラー:岩崎大輔(オアシス南国天)、澤田拓郎(メインキャスト) 映像:川崎貴司(プリズム) 映像制作:佐藤のぞみ(ジュリアジャパン)、塚田渉太(ジュリアジャパン) 特殊効果:井上健一(インパクト)、森田大輔(インパクト) 衣裳:渡邊礼子(アーク・プロジェクト) 衣装助手:井上真湖(アーク・プロジェクト)、森田佳那子(アークプロジェクト) 衣装進行:前川裕子 ヘアメイク:木村美和子(raftel)、三根英世(raftel)、中島愛貴(raftel) ウィッグ協力:クラッセ アクション協力:ジャパンアクションエンタープライズ、Office ENDLESS 大道具:俳優座劇場舞台美術部 小道具:平野雅史(Office ENDLESS) 小道具協力:Office ENDLESS 楽曲提供:T.M.Revolution、石川智晶、CAPCOM スチール:新井潔 グッズデザイン:菅原大介(Ligh.) Web制作:まめなり 収録:カラーズイマジネーション プロデューサー:下浦貴敬、徳秀樹 アソシエイトプロデューサー:石井修司 制作プロデューサー:榊陽介 票券:早崎砂絵子(Office ENDLESS)、中里史絵 制作進行:大橋沙香(Office ENDLESS)、野田有里、東川清文、浦田智子 公演協力(五十音順) アイズ アガペー アズプランニング AND ENDLESS 石井美智子 SOS Entertainments Entertainments EPICレコードジャパン えりオフィス LDH Office ENDLESS オフィスクロキ キティ 劇団ZTON サトーサンプリングルーム 思誠館道場 ジャパンアクションエンタープライズ スペースクラフト スマイルカンパニー センスアップ そら テアトルアカデミー TFP企画 ドリームプラス ドルチェスター ビーイング Playce ボックスコーポレーション MATERIAL WORLD 宮津ルーム ライブビューインジャパン 特別協力:JTBコーポレートセールス 主催:ダイス、エンタテインメントプラス、キャナルシティ劇場(福岡公演)、中日新聞社(名古屋公演) エグゼクティブプロデューサー:三角大
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1789.html
とある城のとある座敷で、年端も行かない子供が二人 戯れていた。男の子と女の子のようだ。 「ほらほら、返して欲しけりゃここまで来いよ!」 「返して…お人形返して…」 「もっと早く走れよ。のろま!」 「かえして…かえして……(くすんくすん)」 「あっ!泣いてやんの!みっともねぇ~」 「…(しくしく)」 最初は仲良く遊んでいたのに、穏便ならぬ様子に 子供達の守役が現れる。 「こらッ!姫様!お客様を苛めていかがなさいます!!」 「いじめてなどない。遊んでただけだ。(つーん)」 「若、もう大丈夫ですよ。泣き止んで下さいまし。」 「……(しくしく)」 「長曾我部の若様、それに守役殿、申し訳ございませんでした …ほら姫様もお謝りなさい!」 「うるさいぞ小十郎!オレは謝るようなことはしておらぬ!」 「また汚い言葉を使って…お尻を叩きますよ!」 「やってみろ!べーだ!!」 「……(しくしく)」 「若様、しっかりして下さいまし。それだから「姫若子」などと 噂されるのですよ?」 「……(しくしく)」 「やーい、馬鹿こじゅー!捕まえてみーろ!」 「待ちなさい!このクソ餓鬼ぁぁ!!」 「(…まぁ伊達の姫君ほど元気になれとは言わないけど…(^^;)」 <そして現在> 「な~んて事、よく有ったよなぁ。あの時はお前がこんな 別嬪になるとは夢にも思わなかったぜ?!」 「…俺はお前が男で、しかも海賊になってるたぁ夢にも思わなかったよ。 っていうか、ここ数年で何が有ったんだお前。」 昔を懐かしむ(?)元親と政宗だったとさ。 (おわり) おなごBASARA 続②
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1900.html
次に来るだろう衝撃に備えて政宗はきゅっと目を瞑ったが、 なかなかそれは訪れなかった。何事かと恐る恐る目を開けようとしたその時、 強く腕を引かれ、抱き締められた。 「!!」 あまりの事に一瞬何が起きているのか分からなかった政宗だったが、 背中に回された強い腕の感触に 自分が小十郎の胸の中に抱き込まれているのだと気付くや、 白い頬をかぁっと紅潮させた。 「こ、小十郎…?!」 「…全く…あなたと言う御方は…!」 鎧に覆われた厚い胸に顔を押し付けられる形になっているので、小十郎の表情は分からない。 しかし耳に響くその声がひどく切実で、背中を痛いほどの力で抱く腕が ほんの僅かに震えている事に、政宗は気が付いた。 「何故いつも、この様に無謀な事をされるのです… 何故もっと、家臣や民を労るように御自分を大事にしては下さらないのですか…!!」 「小十郎…」 「姫様の身に何か有ったなら、この小十郎に… 伊達家に仕える者達に如何にせよと申されるのか…」 「……」 「もうこの様な振る舞いは、これっ切りにしていただきたい…!!」 「…分かったよ…分かったから……」 泣くな。 そう言いかけて、やめた。その代りに自らの腕を小十郎の背中に回し、 出来るだけ優しくさすった。 「Sorry、小十郎。…俺が悪かった。もうこんな事はしねぇよ。」 「…本当でしょうな。」 「……たぶん」 煮え切らない政宗の言葉に、一瞬脱力したように小十郎の腕が緩んだが、 ひそやかに聞こえた「仕方のない御方だ」という呟きが 僅かに笑みを含んでいたので、政宗は安心した。 そして、小十郎に「姫様」と呼ばれたのも、こんな風に抱き締められるのも、 随分と久しぶりだとひっそり微笑んだ。 おなごBASARA 最終5
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1899.html
「思わねぇな。あんな雑魚共相手に。」 「多勢に無勢。万が一と言う事も有りましょう。」 「…有ったとしても人質になる止まりだろうよ。 どんなに女に飢えてようと、この鎧の下の肌を見りゃ…」 「政宗様ッ!」 荒げられた声に、政宗は続けようとしていた言葉を飲み込む。 そしてこちらを見る小十郎の眼がひどく真摯だった為、そのまま黙った。 「…その様な事、二度と申されますな。」 「……」 「帰りましょう。皆、心配しております。」 そう言って歩き出す小十郎の背中をしばらく見た後、政宗はその後ろに大人しく従った。 天下の独眼竜も、この家臣の前ではいつまで経ってもただの小娘だと、少々情けなく思った。 小十郎の馬は森の入口に繋がれていた 。そこに向かうまでの道のり、小十郎も政宗も無言のまま歩く。 少し前を歩く小十郎の顔を窺うと、相変わらずその表情は人を殺せそうに険しい。 それに小十郎は本気で怒ると黙り込む癖が有るので、これはまだかなり怒っているなと 政宗は内心ため息をついた。深く考えるまでもなく、 今日一日の自分の行動を思い返してみれば、小十郎の逆鱗に触れて当たり前だ。 政宗は潔く覚悟を決める事にした。 「…なぁ、小十郎。」 無言でこちらを見る小十郎に、一瞬言葉を詰まらせながらも、 政宗は続けた。 「言い訳はしねぇ。…その…今日は色々、俺が悪かった。 ぶつなり何なり気の済むようにしてくれていい。…だから」 「……」 「だから、何か言ってくれよ…」 小十郎が、歩みを止めてこちらに振り向いた。気をつけていたのに 語尾が僅かに震えていた自分を不甲斐なく思いながら、政宗は来るなら来いと身を堅くした。 小十郎は昔から自分の主君だろうと幼い女子だろうと一向に構わず 非があればビシビシひっぱたいて来る、いささか過激な守役だったのだが 政宗が急逝した父の跡目を継いだ後は、流石にそれも影を潜めていた。 だが今日当たりは拳で殴られても文句は言えないし、 何より今のように黙り込まれるよりはマシだと、政宗は近付いて来る小十郎を見上げた。 「政宗様。」 「あぁ。」 「では…御免。」 「いいぜ。…やれ。」 おなごBASARA 最終4
https://w.atwiki.jp/bsbwiki/pages/16.html
舞台「戦国BASARA」 2009年7月3日~7月12日 東京ドームシティ シアターGロッソ 【出演者】 武将 伊達政宗:久保田悠来 真田幸村:片岡信和 片倉小十郎:吉田友一 猿飛佐助:村田洋二郎 濃姫:長澤奈央 森蘭丸:椎名鯛造 明智光秀:谷口賢志 織田信長:窪寺昭 アンサンブル 今井靖彦 高橋光 浅井宏輔 高橋玲 高田将司 宇田卓也 岡田貴義 細川晃弘 渡邊昌宏 澤江晃史 竹中寛幸 佐久間祐人 八巻正明 竹内諒太 一内侑 植野正浩 大畑真彦 永島真之介 平野雅史 村瀬啓佑 音野暁 石井寛人 【スタッフ】 原作:CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ) 作・演出:西田大輔 脚本協力:むとうやすゆき 監修:小林裕幸(CAPCOM) 舞台監督:粟飯原和弘 照明:千田実(CHIDA OFFICE) 音響:前田規寛(M.S.W.) 舞台美術:角田知穂 舞台美術製作:ジャンジャックアートスタジオ 衣装・美術監修:株式会社エレファントチョップ エグゼクティブプロデューサー:齊藤孝司 プロデューサー:関口賢・三角大・西田美由紀 ラインプロデューサー:竹内忠宜 企画・製作:舞台「戦国BASARA」製作委員会 制作:株式会社H&M アクション協力:JAE(ジャパンアクションエンタープライズ) 主催:TBS 東京ドーム 東京ケーブルネットワーク イーエス・エンターテイメント 協力:株式会社アガペー AND ENDLESS 株式会社イクスライン 株式会社エースクルーエンタテインメント 株式会社ソサエティ オブ スタイル 株式会社2年3組 BESIDE(宮津ルーム) 株式会社プロマージュ 株式会社メインキャスト
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2029.html
『小十郎…儂は生まれて初めて、天の采配を恨むぞ…。』 片倉小十郎はその森に足を踏み入れるなり、眉を顰めた。 鉄錆と、獣の臭い。大量の血と、それに誘われた山犬のものだと知れる。 物音は無い。しんと静まり返る森は、戦い終わった戦場の空気と、ひどくよく似たものをその身に包んでいた。 地に転がった肉を食んでいた山犬は、近付く人間の気配を察すると素早く闇の中に姿を消した。 無益な争いを好まない分、動物とは賢いものだと小十郎は思う。 灯りは無くとも、青白い月光に目の前に広がる惨状はしらじらと明らかになった。 数にしておよそ二十人程度だろうか。いかにも野盗か野伏せりかといった風体の男達の骸が散乱している。 小十郎は表情も無くそれらを見下ろすと、どれも刀傷で絶命している事を認めた。 政宗がやったのだろう。それは分かっている。 しかし肝心の政宗の姿が何処にも見えない。 「政宗様!何処に居られるのか!」 そう声を張り上げて呼ぶが、返事はない。 言い様のない不安を押さえ込みながら、さらに森の奥に踏み入ると、 見慣れた鉄の塊が地面に打ち捨てられるように転がっているのが目に入った。 それは、見間違える筈もない。弦月の前立てに飾られた政宗の兜だった。 慌てて拾い上げると、それは血飛沫を浴びている訳でも、ひどく破損している訳でもない。 ただ、その主の姿だけが見当たらなかった。 「政宗様…ッ!!」 小十郎がもう一度主の名を呼ぶと、背後に生えている枝振りの見事な樹の上部がガサガサと騒ぎ、 声が降って来た。若い娘のものだった。 「小十郎か?」 「…!政宗様?!そこに居られるのですか?!」 「ああ。」 「何故そのような所に…ご無事なのですか?!」 「一遍に聞くんじゃねぇよ。これから説明する。…もうその辺に山犬は居ないな?」 政宗の問い掛けに、小十郎は律義に周囲を見回す。 「居ないようです」 「OK 今降りる。」 再び枝を揺らす音が響き、地面に藍色の影が降り立った。 それは兜を被っていないことを除けば、稽古事を嫌がって城を出た時と まるで変わった様子のない政宗だった。 「お、兜拾ってくれたのか。Thank Youな。」 小十郎の手から兜をかっさらうと、いつものように被り、顎紐を締めた。 「ったく山犬には餌と間違われるわ、逃げた木の上じゃ兜に虫が入るわ 参ったぜ…って、どうした小十郎?」 おなごBASARA 続②6